おいしいごはんを食べよう県民運動のあゆみ

発見しよう、こころにおいしいごはん。

私たち日本人は、戦後の復興の中でしあわせを求めて前に進み、高度経済成長を経て世界でも有数の豊かさを手に入れました。

私たちの回りには、フレンチ、イタリアン、中華をはじめ欧米からアジア、エスニックといった世界中の料理や食材があふれています。その豊かさ、選択肢の多さゆえに私たちの食生活において「ごはん」の割合は小さくなり、お米の消費量は低下してきました。

かと言って、私たちは決してごはんを嫌いになったわけではありません。ただ、ごはんを積極的に取り入れるという必要性を感じにくくなっているのではないでしょうか?

でも、暮らしから存在感が薄れていく「ごはん」とともに、日本人として置き忘れてはならない何かがあると感じるのです。

それは、炊きたてのごはんに昇る湯気やお箸にのせたごはんから立ち上る薫り、こうしたときにくすぐられる「こころ」です。

決して毎日毎食ごはんを食べていた昔に戻そうということではありません。古来から私たちの生活に馴染んできた「ごはん」の大切さを再認識し、現代の、そしてこれからの日本人の生き方に合った「こころにおいしいごはん」の存在を明らかにしたい、そして、みんなに気づいてほしい。

こうした思いを込めて私たちは「おいしいごはんを食べよう県民運動」を進めています。

おいしいごはんを食べよう県民運動の歩み

■奇跡を生んだ「おむすび」

平成7年1月17日。阪神・淡路大震災により一瞬にして生活の根拠を失った被災者は、170万人にも及びました。多数の被災者が避難所で飢えと渇きに直面しながらも、大きな混乱が起こらなかったのは、まさに奇跡でした。その奇跡を支えたのは情報途絶のなか、大渋滞の道路をぬって届けられたたくさんの「おむすび」でした。

真っ先に神戸市北区、西区の農家の皆様、そして県内の、やがて近隣府県の皆様がおむすびをつくり、被災地へ届けられました。幸いなことに平成6年の秋は豊作で、お米が農協の倉庫に大量にストックされていました。もし、地震が1年前に発生していたら、平成5年の秋はお米が不作だったため、いくら農村に善意があってもお米はなく、大量のおむすびもつくれなかったでしょう。

改めて、大都市の近くに農村が計画的に配置されていること、そこに豊かな食料が蓄えられていること、そして食料を国内で自給することの大切さを強く認識することになりました。

■おいしいごはんを食べよう県民運動の展開、そして国民運動への発展

この震災で知った「ごはん」の大切さを語り継ぎ、広く兵庫県民一人ひとりが食料と農業のことを考え、行動するという「おいしいごはんを食べよう県民運動」が平成9年にスタートしました。
おいしいごはんを食べよう県民運動は、①将来危惧される食料危機に対応する食料自給率の向上、②生活習慣病の予防といった健康的な食生活の実践、③環境保全や災害防止の働きを持つ水田の多面的機能の評価、④農業・農村の活性化が震災等への備えとなる危機管理という4つの社会的に大きな理念を掲げています。

この県民運動の理念は、各都道府県共通の課題として認識され、平成11年には、47全都道府県の賛同を得て、全国の企業、団体、行政による「ごはんを食べよう国民運動」として発展をみることになりました。

■ごはんの学校「ゴーゴーご組」

こうした中、ごはんを食べよう国民運動推進協議会(事務局:兵庫県)が農林水産省の補助を受け、兵庫県を舞台に、新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々なメディアを積極的に活用して幅広い世代に「ごはんを中心とした日本型食生活」を普及啓発するモデル事業(平成18~20年度)に取り組むことになりました。

この事業の一環として、平成19年9月にインターネット上に、ごはんの学校「ゴーゴーご組」を開設することができました。ゴーゴーご組は、神戸大学名誉教授の保田茂先生が校長に、女優の藤原紀香さんが初代の学級担任に、そして各方面の専門家の先生方が参加し、生徒である会員と双方向で、お米やごはんについて一緒に勉強しようというこれまでにないシステムです。毎日の授業はもちろん、課外活動や成果発表会(大規模食イベント)もあり、みんなで新しいごはんの魅力を発見し、広く情報発信してきました。

なかでも、保田校長が幼稚園や小学校を訪問し、子どもたちのかまどを使った炊飯体験と保護者の皆さんへの楽しい講義を組み合わせた「かまどごはん塾」は、参加者のごはん食に対する感動と納得を呼び起こし、モデル事業が終了した今も、兵庫県下で毎年2,000名を超える皆さんが参加する「おいしいごはんを食べよう県民運動」の主要な取り組みとして育ち、広がっています。

■ごはんを食べよう国民運動の歩み

国民一人ひとりが“お米”を通じて、これまで先人たちが営々として築いてきた豊かな食文化、美しい日本の自然を将来に継承し、いつまでも健康的な生活が送れるよう、消費者をはじめ生産者、学識経験者、団体・企業、国や地方公共団体などが一体となった国民総ぐるみによる運動を推進することを目的として、平成11年にごはんを食べよう国民運動推進協議会(事務局:兵庫県)が設立されました。

設立以降、会員のご理解・ご協力により、全国各地で米の消費拡大運動や食育の取り組みが幾重にも展開され、また日本型食生活や和食が脚光を浴びるようになりました。さらに、農業・農村が持つ文化や、農業の多面的機能が再評価されるなど、運動の一定の成果が見られるようになりました。

平成30年に協議会は設立20年の節目を迎えました。この間、地域での自主的な取り組み等が大きく進んだことから、平成30年8月31日をもって協議会は解散し、運動理念と「1.17おむすびの日」(日本記念日協会)は公益社団法人米穀安定供給確保支援機構へ引き継ぎ、会員は、解散後もそれぞれにおいて自主的な取り組みを続けることになりました。

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